8,000人が「機内モード+Wi-Fi」で町の回線を守った ― 第19回日本スカウトジャンボリーの通信インフラ

はじめに

「数千人規模のイベントを開くと、地域の通信回線に負担をかけてしまうのでは」。山あいや地方の会場でイベントを開くとき、こうした心配を抱える主催者や自治体の方は少なくありません。

2026年8月4日から10日まで、広島県神石高原町で「第19回日本スカウトジャンボリー(19NSJ)」が開かれました。4年に1度の、日本のスカウト運動で最大のイベントです。会期中のピークには、海外からの参加者を含めて約8,000人が集まりました。

この大会では、主催者のボーイスカウト日本連盟様により、参加者全員がスマートフォンを機内モードにして、大会のWi-Fiにつなぐというルールが定められました。IIJエンジニアリングは開催者様よりご依頼いただき、会場に衛星ブロードバンドのStarlinkを持ち込み、大会本部、運営施設、参加者向けのWi-Fiを提供しました。

会期中、町にお住まいの方々の通信に影響は出ず、大会も円滑に運営できたそうです。その一番の理由は、スカウトから指導者・スタッフまで、参加者全員が最後までルールを守ってくださったことです。大会の終了後には、主催者のボーイスカウト日本連盟様と神石高原町 両方のご担当者様から、感謝のお言葉をいただいています。

こんなお悩みはありませんか

  • 大勢の来場者が携帯回線を使うと、地域の方の通信までつながりにくくなりそう
  • 会場の周りに固定回線がない、または地域の回線に負担をかけたくない
  • 運営やキャッシュレス決済の通信は、止めたくない

どれか1つでも当てはまる方は、本記事の取り組みがきっとお役に立ちます。

イベント概要

項目 内容
大会 第19回日本スカウトジャンボリー(19NSJ)
会期 2026年8月4日(火)~10日(月)
会場 広島県神石高原町 神石高原ティアガルテン・カントリーパーク仙養
規模 参加者7,932人

会場の課題:地域の回線は使えない

神石高原町の中でインターネットにつなぐ手段は、CATV会社の回線網だけです。約8,000人が集まる大会の通信をこの回線網に流せば、町にお住まいの方々の暮らしや仕事の通信にまで影響が出かねません。そのため、既存の回線網は使わないことが最初の前提になりました。
会場は自然豊かな高原にあり、携帯キャリアの電波も強くありません。約8,000人が一斉に携帯回線を使えば、会場の周りの基地局に利用が集中し、町にお住まいの方々の携帯までつながりにくくなるおそれがありました。

そこで、ご依頼いただいた内容は次の2点です。

  • 円滑に大会運営が実施できるインターネット接続環境を用意すること
  • 参加者にも、Wi-Fiを提供すること

解決策:通信を「持ち込む」

「機内モード+Wi-Fi」で地域の回線を使わない

町の通信を守るには、通信を運ぶ設備を用意するだけでは足りません。参加者の端末が地域の携帯回線を使わないようにすることも必要です。
そこで主催者は、参加者全員がスマートフォンを機内モードにしたうえで、Wi-Fiだけを有効にして大会のWi-Fiにつなぐというルールを定めました。機内モードにすると携帯回線への接続は止まりますが、Wi-Fiは使えます。これで参加者の通信はすべて大会のWi-Fiを経由することになり、町の携帯基地局やCATV回線網には流れません。
私たちの役割は参加者全員がこのルールを無理なく守れるよう、会場の様々な場所にアクセスポイントをまんべんなく配置することで、どこにいてもつながるWi-Fiを提供することでした。

エリアを区切ってStarlinkを設置

インターネットへの出口には衛星ブロードバンドのStarlinkを採用しました。町の回線網とはまったく別の経路でインターネットにつながるため、どれだけ使っても町の通信には影響しません。
会場を14のエリアに分け、エリアごとにStarlinkを1台ずつ設置しました。エリアの中にある複数の施設へはWi-Fi APを複数設置し、合計25か所をカバーしています。エリアごとに回線を分けているので、あるエリアで障害が起きても、ほかのエリアには広がりません。

運営と決済の通信を優先

Wi-Fiは利用者と用途に合わせて複数のSSIDを提供し、重要な通信から順に優先しました。
参加者向けのWi-Fiに利用が集中しても、大会運営、決済、情報発信の通信に影響がでないようQoSを設定しました。

テントの会場でも設置できる

設置場所の多くはテントでした。現場に合わせて、様々な機材の設置方法を使い分けました。

アクセスポイントには屋外用のモデルを使い、テントの骨組みに固定しました。骨組みに付けられない場所では、スタンドを使っています。

電源は発電機から安定して取る

会場には電源設備がないため、電源は発電機から取りました。発電機の電気は出力が揺らぎやすいため、発電機とネットワーク機器の間にポータブル電源を挟み、機器へ安定して給電できるようにしています。

会期中の運用と実績

会期中は晴天が続き、最高気温は36℃に達しました。強い日差しと暑さのなか、エンジニアが稼働状況を見守りました。

項目 実績
稼働AP数 23台
ユニーククライアント数 2,073台
総通信量 約1,984GB(約2TB)

町の回線を一切使わずに、約2TBの通信を支えました。

ルールを守ってくれた参加者の皆さん

約2TBの通信をStarlinkだけで支えられたのは、ネットワークの力だけによるものではありません。

約8,000人の参加者全員が、7日間にわたって機内モードのルールを守ってくださいました。一人でも多くの人が守らなければ、町の回線を守ることはできません。大人数が集まる場で決まりを守り続けられたのは、仲間や地域への思いやりを大切にするスカウト運動の精神があってこそです。

通信インフラは、技術と、それを使う人の協力がそろってはじめて機能します。今回、そのことをあらためて実感しました。

町と主催者、双方から感謝の声

大会の終了後、公益財団法人ボーイスカウト日本連盟様からお礼状をいただきました。スカウトの皆さまが「挑戦 ~神石から未来への一歩~」のテーマのもとで貴重な体験をされ、大会が成功のうちに終わったことを、私たちも大変うれしく思っています。

神石高原町のご担当者様からも、町の通信に影響を出さずに大会を終えられたことに、感謝のお言葉をいただきました。技術面の準備と、参加者の皆さんのご協力。その両方があったからこそ、イベントの成功と地域の暮らしを両立できたのだと考えています。

まとめ:野外イベント・地方会場の通信はご相談ください

提案の際、私たちはボーイスカウトのモットーである「Be Prepared(そなえよつねに)」の精神で準備にあたることをお約束しました。

IIJエンジニアリングは、StarlinkとWi-Fiを組み合わせたマルチアクセスソリューションで、回線や電源のない屋外の現場へ通信を持ち込みます。地域の通信インフラに負担をかけずに、必要な通信を必要な場所へ届けます。機内モードでのWi-Fi利用など、来場者に守っていただく運用ルールづくりについても、主催者様と一緒に検討いたします。設計、構築、現地での運用、撤去まで、一貫してお任せいただけます。

  • 地方や山間部での大規模イベント
  • 地域の回線に負担をかけたくない自治体主催の催し
  • 防災訓練や、災害時の仮設拠点

 

このような場面で通信にお困りの際は、ぜひお気軽にご相談ください。

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